中間地点を通過!!
この映画を見る前に、カシミール問題を勉強する必要がありそう。
映画の前半では、カシミールの悲惨さが表現されていて、安全がタダだと思っている日本人にとっては、ただただ衝撃だ。
頻発するテロ、武装勢力が選挙を妨害 -- 日本じゃ、考えられないよね。そもそも、日本には武装勢力などいない。しかし、カシミールでは、投票所で自爆テロだって! 信じられない! 恐くって、投票など行けないじゃないか。
少年が武装勢力に勧誘される -- 武装勢力の新戦力として、少年が兵士に勧誘されるケースがあるようだ。武装勢力にスカウトされ、軍事訓練所で訓練を受けて少年兵になるなど、あってはならないことじゃないか!
HIDER でも、少年ハイデルが銃を隠し持っているのを母親が見つけ、放っておけば武装勢力に勧誘されてしまうのを防ぐために、ハイデルをカシミールから遠く離れた地に送ろうとするシーンがある。ハイデルは、どこにも行かないと言い張るが、母親は自分のこめかみに銃を当ててハイデルを説得する。
日本じゃ、こんな映画、作れないよ。
軍に逮捕されて行方不明に -- カシミールの治安を守るために、インド軍が駐屯しており、特権を与えられている。実際には、行き過ぎがあるようで、拷問を伴った取調べや、逮捕されたまま行方不明になってしまうなど、国際的な人権問題になっている。
アジア・太平洋人権情報センターの Web ページには、「カシミール-聞こえざる声、届かぬ声」と題するレポートが掲載されている。
この映画では、ハイデルの父親が逮捕された後、行方不明に。
まさに、この映画のテーマだ。
カシミール人の誰もが、平和に生きたいと思っているはずなのに、なぜ、こんなグダグダになってしまうのか!
カシミールって、どんなところ?
カシミールの場所は、インドの一番北、ひし形の一番上。面積は 22 万平方キロメートルで、日本の本州とほぼ同じ大きさ。
約半分をインドが支配、3 分の 1 をパキスタンが支配、残り 6 分の 1 を中国が支配している。
これだけで、カシミールがいかにグチャグチャな状態か、想像できる。
民族も宗教も多様。イスラム教が多数だが、ヒンズー教、仏教、ラマ教もいる。
大半が山岳地帯。木々の緑と湖が美しい風光明媚な土地で、気候は清涼。
観光資源に恵まれているが、ラダック以外は危険地帯。
外務省は、ラダック以外のカシミールへの渡航を控えるよう呼びかけている。
米のほか、トウモロコシ、小麦、豆、蕎麦などが栽培されている。
主食は米。ラム、マトン、ヨーグルトを使った辛いカレーが郷土料理とのこと。
カシミアヤギの毛で織ったカシミールの毛織物がカシミアなんだって!
へ~、そうなんだ。
カシミール問題の概要
インドがイギリスから独立するときに、インドとパキスタンに分かれてしまうわけだけど、カシミールを統治していた藩王は、独立を画策して、インドとパキスタンのどちらに帰属するとも言わなかった。カシミール住民の多数派はイスラム教、藩王はヒンズー教ということで、微妙な立場だったようだ。イスラム教徒がパキスタンへの帰属を求めて暴動を起こすなど、カシミールは混乱状態に陥った。
業を煮やしたパキスタンが武力介入すると、藩王はインドへの帰属を表明。
藩王の要請を受けてインドがカシミールに出兵し、パキスタンとの紛争に発展した。
第一次印パ戦争である。1947年10月に始まり、停戦となったのは 1948年の大晦日。
1948年8月、カシミールがインドとパキスタン、どちらに帰属するかは住民投票で決めるとの決議が国連でなされたが、インドの反対で実現されなかった。
カシミールには多くの武装勢力があるが、その主張は様々だ。パキスタンへの帰属を求めるグループもあれば、独立を志向するグループもある。パキスタンで軍事訓練を受けたグループもあれば、アフガニスタンのタリバン勢力もある。ジハードを唱えるアラブ人グループまで存在する。
カシミール最大の武装組織は、ヒズブル・ムジャヒディン。
カシミールのイスラム教徒の組織で、パキスタンへの帰属を求めており、外国人主体の武装組織とは一線を画している。映画 HIDER にも、ヒズブル・ムジャヒディンの名が出てくる。
どうすれば問題が解決するのか、いつになったら問題が解決するのか、誰にも分からない。
HIDER では、そんな絶望的なカシミールの姿が丹念に描かれている。
こんな映画も、たまには見るものだ。
インド映画には、愚にも付かない面白さを求めてきたが、岩波ホール向きの、こんなシリアスな映画も良いものだ。普段考えていなかったことを考えさせてくれる。
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