2012年10月22日月曜日

インドの戦争映画 『Tango Charlie』 (タンゴ チャーリー)

2005 年公開の Tango Charlie (タンゴ チャーリー)を、英語字幕で見た。
インド映画には珍しい戦争モノだ。
インドではコケたものの、アメリカで中ヒットしたようだ。

映画は、YouTube で偶然見つけた
YouTube にアップされているインド映画の多くは、字幕など付いていない。
英語字幕がころがっていないかと探す。
Google に「Tango Charlie subtitle」を尋ねると、即座に答えが返ってきた。ほとんどのインド映画の英語字幕は、誰かがアップしてくれている。

事前に何の情報もなかったので、何も期待せずに見たが、良い意味で期待が裏切られた。
良かった!
評価は、堂々の B。

この映画は、勇気を賛美するような、カスみたいな映画ではない。
国のために命を捨てろと教えるような、愛国クソ映画ではない。
戦争の悲惨な負の側面を描いた映画だ。
兵士に人間らしさを求める映画だ。
命を大切にしろと教える映画だ。
こういう映画は好きだ。
いつかは翻訳してみたいインド映画が、1 つ増えてしまった。
戦争を知らない日本の若者は、もちろん年寄りも、こうした映画を積極的に見るべきだ!

戦争映画といっても、そこはインド映画。
ハリウッドの戦争映画のような、予算をふんだんに使った迫力ある戦闘シーンを期待してはいけない。

歌もあればダンスもあるが、まるで大したことない。どの曲も、まったく記憶に残らない。
それに、どこかで見たようなストーリー。
プラトーンに始まり、レマゲン鉄橋になって、ランボーで終わる。
いくつかのエピソードが、オムニバス形式でつながった映画だ。

テーマは、ヒューマニズム。
命令と良心のどちらに従うべきか!
飽き飽きしたテーマかもしれない。
しかし、人間にとって、これが永遠のテーマであることを忘れてはならない。

そして、インド映画らしく、サブテーマは「ピャール」(愛)だ。

以下、あらすじを紹介する。

カシミールの山岳地帯を、偵察ヘリが飛んでいる。
目的地に着くと、戦闘の跡。
そこで、雪の中で倒れている瀕死のインド軍兵士を救出する。
身分証から、兵士の名前がタルン・チャウハン、コードネーム  タンゴ・チャーリーとわかる。
兵士は、一冊の日記帳を所持していた。
ヘリの搭乗員は、その日記を読み始める。
そこには、タンゴ・チャーリーが、戦争で経験したことが書かれていた。

タンゴ・チャーリーが最初に赴いたのは、インドの最も東にあるマニプール州。
テロリスト掃討作戦を展開するムハンマド・アリ(コードネーム マイク・アルファ)の部隊に配属される。

マニープール州は、ミャンマー(旧ビルマ)と接している。州都は、インパール。第二次世界大戦で、日本軍が食料も補給もなく無謀な作戦を決行し、多くの兵士を病死あるいは餓死させた、あのインパールだ。

始めてジャングルを見たタンゴ・チャーリーは美しい自然に感動するが、そんな感動はたちどころに失せてしまう。
ジャングルでは、敵がどんな罠をしかけているか、常に注意しなければならない。

そこで、タンゴ・チャーリーは最初の恐ろしい体験をする。

敵に捕らえられた兵士の一人が、瀕死の重症を負わされ、木に縛られて苦しんでいる。
敵は物陰に身を隠し、その兵士を助けに来れば、狙い撃ちしようと待ち伏せている。
それを、木の影から見ているタンゴ・チャーリー。
ただ、味方の兵士の寿命が尽きるのを見ているしかなかった。

やがて兵士の命が切れる。
それでも、じっと動かない。
もう、敵は逃げただろう、、、そう思わせるのが狙いだ。
案の定、敵が物陰から姿を表す。
戦闘はインド軍の勝利に終わったが、両手をあげて喜べるような勝利ではなかった。

その後、タンゴ・チャーリーは自宅に戻る。
そこで、恋人ラッチーに出会う。
インド映画らしく、もちろん 2 人は恋に落ちる。

ラッチーとの結婚話しで、インドの結婚における持参金問題にも触れられている。
この辺り、少々冗長な気がしたが、ラッチーとの結婚話しは、兵士も生身の人間だという主張につながっている。
こうした展開も、ストーリー上、決して無駄ではないと思う。
ただし、戦争映画に戦闘シーンのみを期待している人は、この進行は耐えられないかもしれない。

そうしているうちに、軍から命令書が届き、タンゴ・チャーリーは次の任務に赴く。
要人とその家族をパキスタンのハイデラバードに護送する任務だ。
しかし、テロリストが道路脇に仕掛けた爆弾によって、何の罪もない女性や子供が犠牲になってしまう。
その戦闘で、タンゴ・チャーリーは逃げた敵の一人を追いかけて捕まえる。
敵は女だ(映画見てれば予想できる!)。
古参兵が、その女兵士をレイプしようとするのを、タンゴ・チャリーは止める。
隙を見て、敵の女兵士は銃で自殺してしまう。
古参兵ともみ合っているうちに、タンゴ・チャーリーは、ナイフで相手を殺してしまう。
そこへ、隊長のマイク・アルファが登場。
「覚悟はできています。どんな罰でも受けます」とタンゴ・チャーリー。
「お前と同じ状況なら、私も同じことをしただろう」とマイク・アルファ。(映画見てれば、このセリフも予想できる。インド映画はシンプルだ。決して予想を裏切らない)

次は、タンゴ・チャーリーたちが、グジャラート州で発生した暴動の鎮圧に出向いたときの話しだ。
兵士たちは、暴徒に発砲し、無実の市民を多数殺してしまう。
タンゴ・チャーリーも、発砲してくる敵を狙うが、群衆の中の別の 1 人に当たってしまう。
無実の市民を殺してしまったタンゴ・チャーリーは、その家族のもとに謝りに訪れる。
しかし、家族は許さない。
タンゴ・チャーリーは袋叩きにされてしまう。
そこへ、マイク・アルファが助けに来る。そして、人々に向かって言う。
「我々が罪もない人々を殺したことは認める。
しかし、それはお前たちの責任だ。
俺は、お前たちのようなバカを見たことがない。
こいつは、心優しい。だから、お前たちに謝りに来たんだ」

次のエピソードは、タンゴ・チャーリーのエピソードではなく、マイク・アルファーがタンゴ・チャリーに語って聞かせた話しだ。

マイク・アルファーは、西ベンガルのナンディプルの地主の警護に赴く。
敵は、暴力革命を目指す過激派ゲリラだ。
ここで、マイク・アルファーは、地主の娘に出会う。
間もなく娘の結婚式。

しかし、ここいらのシーンも冗長だなあ~~~~。
先へ先へと焦らないところが、インド映画なんだよな。

マイク・アルファーは、地主に、カルカッタに逃げることを薦めるが、地主はそれを拒否。
娘の結婚式が行われている最中に、敵が攻めてくる。
敵の「先生」と呼ばれる思想的リーダーを倒したものの、マイク・アルファーと地主の娘のみが脱出に成功。ジャングルに逃げ込む。
敵の山狩りが始まる。
逃げるマイクと姫。

恋に落ちる 2 人。
当然、歌が入る。
さすが、インド映画!!!
そう、こなくっちゃ!

しかし、敵との交戦になり、姫は撃たれて死んでしまう。
これで、マイク・アルファの思い出話しは終わり。

次に、タンゴ・チャーリーのもとに、ラッチーが他の男と結婚するという手紙が届く。
急いで帰ると、それはラッチーのウソ。
タンゴがどれだけ愛しているかを確かめたのだと言う。
そして、2 人は正式に婚約する。

ある日、ラッチーはタンゴの荷物から日記を盗みだして、それを読む。
書き綴ってある悲惨な体験。
「色々な経験をしたのね」
「今日、初めて、あなたの思いの深さがわかった」
「私、あなたの愛に相応しいかしら?」

そして、部隊はカシミールへ。
カルギル紛争が勃発したと言っているので、1999 年か?
部隊は、橋の守備を命じられる。
その橋は、カルギルへの唯一のルートで、橋が通れなくなると前線の部隊への補給が途絶える。

橋を爆破しようとするパキスタン系のゲリラ。
守りぬこうとするインド軍。
まるで、ドイツ軍と連合軍が死闘を繰り広げたレマゲン鉄橋だ。
橋の下での戦いは、パクリと言われてもしょうがない。
いいさ、それがインド映画だ!!


上の動画が、レマゲン鉄橋。下が、タンゴ・チャーリーの 1 シーンだ。
な、スケールは小さいけど、雰囲気は似てるだろ?


残念ながら、タンゴ・チャーリーの戦闘シーンは、レマゲン鉄橋ほどの迫力はない。
ここで、激戦が繰り広げられ、マイク・アルファーは瀕死の重傷を負う。
襲ってきた敵は逃げたが、タンゴ・チャーリーは敵を追跡し、敵のキャンプを突き止める。

敵の数は約 50 人。こちらは、タンゴ・チャーリーただ 1 人。
こうなれば、ランボーに変身するしかない。

と、まあ、こんな映画だ。
見て損はないと思う。
ただし、古き良き時代のハリウッドの戦争映画を期待しないこと。

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