2012年5月8日火曜日

インド映画『Johdaa Akbar』(ジョーダ アクバル)- その7

イスラム帝国ムガルとヒンズー王国アメールの同盟のために政略結婚したムガル皇帝ジャラルディンとアメールの王女ジョーダ。初めは頑なに拒否していたジョーダも、ジャラルディンの誠実な態度を前に、少しずつ心がほぐれてくる。しかし、ジャラルディンの乳母マーハム アンガーが仕掛けた罠に落ち、ジャラルディンはジョーダを実家に帰してしまう。

ここまでが第一部。今回から第二部だ。

ジョーダはアメールに帰り、広大なアーグラ城に 1 人取り残されたジャラルディン。互いに寂しい思いをしている。このあたりも、インド映画らしく歌で表現し、成功している。

夜の宮殿。ジャラルディンの実母ハミーダが、マーハム アンガーの罠を見破った。
「あの男性は アジャブガーの王子ではなく、ジョーダの兄スージャマルです」とハミーダ。
「何だって! では、あの手紙は?」とジャラルディン。
「ジョーダは それを結婚前に書いた。でも送らなかった。マーハム アンガーは あの手紙を使って、あなたの心に毒を流し込んだのです」
「真っ赤な嘘です。私は何もしていない! 私は無実よ!」と声を荒げるマーハム アンガー。

「黙れ マーハム アンガー!」と、ジャラルディン。
「私の母に向って、大声を出すな!」

これで勝負ありだ。女官サリマの証言もあって、マーハム アンガーの悪事が暴かれる。
ムガルの実権を握ってきたマーハム アンガーは、この件で失脚。

「彼女を迎えに行きなさい」とハミーダ。
「しかし、彼女に会わせる顔がない」
「間違いを認めれば、愛は深まります。ジョーダは、きっと許してくれます」

そうなんだよ。インド映画では、正義は必ず勝つし、誠意と熱意は必ず通じるのだ。

ジャラルディンは、ジョーダを連れ戻すためにアメールを訪れる。
「私と一緒に戻ってくれないか」とジャラルディンはジョーダに言うが、
「私は、どこへも行きません」と拒否するジョーダ。

「あなたは国を征服する方法は知っている。でも国を治める方法を知らない」とジョーダはジャラルディンに言う。
「何を言いたい」
「あなたは 私を征服しただけで、心を射止めてはいないということ」

ジョーダは続けて、
「あなたは、人の心をつかむ方法を知らない。
人の心をつかむには、人の心を調べ、人のささやかな楽しみや悲しみを知り、人の信頼を得ることです。人の鼓動を感じてください! それができた日には、私の心も射止められるでしょう!」

ベッドの中央には、薄幕が引かれている。ジョーダが引いたもの。ジャラルディンは謝るが、簡単には許してもらえない。幕を隔てて別々に眠るジャラルディンとジョーダなのであった。


翌朝、ジャラルディンが目を覚ますと、ジョーダは既にいない。庭から剣を打ち合う音が聞こえてくる。ジョーダが剣の練習をしているのだ。

ジャラルディンはジョーダに向かって言う。
「私に勝ったら、アメールに残ってよい。しかし、私が勝ったら、私と一緒に帰るのだ」

そして、2 人は剣を交える。この映画の名シーンの 1 つだ。
翻訳途中の日本語字幕付きだと、下のようになる。


この勝負、途中で女官が声を掛けたために、ジョーダが破れてしまう。
「私の勝ちだ」
「不公平だわ。ギーラが突然声を掛けたから...」
「関係ない! 私が勝って あなたが負けた」
「さあ 出発の準備だ」
「私は行きません」
「そうか、強制はしない。
しかし、あなたはきっと戻ってくる。
必ず、あなたの心を射止めてみせる!」

ジャラルディンは、時としてこういう格好の良いことを言っては、ジョーダの心を引き付けるのだ。

ジョーダを残してアーグラ城に戻ったジャラルディン。お忍びで、城下のバザールに出かける。
付き人が「警護なしに、市場を歩くのは危険です」と言うが、
「人々の心をつかむには、人々の心を知らねばならない」とジャラルディン。

むむ、どこかで聞いた台詞。そうか、ジャラルディン、ジョーダの言葉が余程効いたか。

ジャラルディンは、バザールでムガルに対する不満の声を耳にする。
「俺たちは皇帝をインド人だとは思っていない」
「ムガルも他の奴らも、皆よそ者だ!」

ジャラルディンの付き人が言う。
「皇帝がインド ラジプートのアマルコートで生まれたのは知っているか?
その皇帝が、なぜよそ者なんだ?
お前たちと同じインド人じゃないのか?」

「皇帝がインド人なら、庶民に何をした?
庶民を思っているなら、なぜ巡礼税を廃止しない?」

ジャラルディンをよそ者扱いするヒンズー教徒たち。彼らの不満は巡礼税だった。
巡礼税とは、ヒンズー教徒が巡礼時に支払わなければならない税金のこと。

「これは許せない。神に祈る者から税を取るとは!」と、ジャラルディンは巡礼税の廃止を決意する。

宮廷の議場で、ジャラルディンは宣言する。
「今後、巡礼税は永久に廃止する」

しかし、イスラム法学者がこれに異議を唱える。
「決定の前に、なぜ私どもに相談していただけなかったのでしょう」

「これは政治上の問題だ。宗教上の問題ではない」とジャラルディン。

イスラム法学者の求めに応じて、大蔵大臣が発言する。
「皇帝、この決定は帝国の金庫に確実に影響を及ぼします」

ジャラルディンは言う。
「帝国の金庫とは何だ。
我々ムガルは他の侵略者とは違う。
インドの富を略奪して、金庫を満たしたりはしない。
ここは私の国だ。
誰にも略奪は許さない!
人々に 知ってほしい。
宗教に関係なく、私は人々を大切にする」

これこそ、ジャラルディンの真骨頂、イスラムとヒンズーの融和政策だ。

「情に流されることなく、賢明な判断をお願いしたい」とジャラルディンの前に手をかざすイスラム法学者。しかし、それが無礼な行為であることに気が付いて手を引っ込める。ジャラルディンが、イスラム法学者より上に立ち、ムガルの全権力を掌握した瞬間だった。

ジャラルディンの声が響く。
「本日より、巡礼税は永久に廃止する!
この命令を直ちに実行せよ!」

巡礼税の廃止により、ヒンズーの諸侯たちもムガルを信頼するようになり、各地の王が続々と挨拶に訪れる。この様子は、この映画のタイトル ソングでもある「Azeem O Shaan Shahenshah」(偉大なる皇帝陛下)で表現されている。


「インド皇帝妃ジョーダバイが、公謁殿にご到着」と声が響き、象に揺られてジョーダが現れる。

「帰ってまいりました。
皇帝はついに、私の心を射止めたのです!」

インドの諸侯たち、
「人々は、あなたを心から受け入れました。
よって、我々臣下より、お恐れながらお贈りいたします。
"アクバル"(大帝)の称号を。
ジャラルディン ムハンマド アクバル!」

歌は続く。
「あなたの宗教、それは愛。
あなたは、多くの人の心を射止めた。
賞賛の言葉では、語り尽くせない。
あなたは、すべての伝統の融合者。
我々は、あなたを心から歓迎する。
偉大なる皇帝陛下!」

ジャラルディンの理想が現実となり、イスラムとヒンズーの融合が図られたかに見えた。
ジャラルディンの行列がアグラ城下のバザールに差し掛かった時、、、

ここまでの上映時間、休憩を挟んで約 2 時間 40 分。
物語は、この後、さらに面白くなる。


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