2013年10月10日木曜日

タタ財閥 -- プロローグ

2005 年に公開された「Bunty aur Babli」(バンティとバブリ)を思い出してほしい。
都会に出て大金持ちになることを夢見ているラケッシュと、同じく都会に出てスーパー モデルになることを夢見ているビンミーが、2 人組みの詐欺師になって騒動を巻き起こす実に楽しい映画だ。

田舎から、街に出てきた 2 人。ラクナウでもカンプールでも、うまく行かない。
ラケッシュが言う。
「こんな小さいクソのような町で、バカ正直にやっても無駄だ」
「それで...」とビンミー。
「ムンバイ」とラケッシュ。
「道端から出発して、宮殿に辿り着ける唯一の都市。そこでは、熱意と努力が正当に評価される」
「本当に、そう思う?」
「もちろん! ディルバイ・アンバニやラタン・タタやビルラがラクナウやカンプールにいたら、アンバニ雑貨店やタタ製粉所やビルラたばこ店でハエ退治をしていたはずだ。ムンバイだから彼らは正当に評価された」

ラケッシュの台詞に出てくるディルバイ・アンバニ、ラタン・タタ、ビルラは、いずれもインド 3 大財閥の当主だ。
今回、ディルバイ・アンバニをモデルにして制作されたとされる「Guru」(グル、2007 年公開)の DVD が手に入ったので、良い機会だと思ってインドの財閥のことを調べてみた。

タタ財閥 -- 1868年にジャムシェトジー・タタがムンバイで創業した綿貿易会社に始まる。ペルシャのゾロアスター教徒の子孫。ラタン・タタは創業家 5 代目当主。親日家でもあり、昨年(1912 年)4 月には英国のメージャー首相とともに、日本政府から旭日大綬章を授章している。インドでは汚職や贈収賄が蔓延しているといわれるが、タタ財閥はインドで最も清廉で善良な企業グループとして尊敬を集めている。

ビルラ財閥 -- バールデーオダース・ビルラーが第 1 次世界大戦中に投機で得た利益を元手に繊維産業に進出したことに始まる。カースト的には商人階級。近江商人やユダヤ商人などと同様に、「ガメツイ」のが特徴。インド独立の父ガンジーを経済的に支えたことで有名。ガンジーが暗殺されたのは、ニューデリーのビルラ邸の裏庭。相続争いによって分裂を繰り返し、かつての勢いを失っている。

リライアンス財閥 -- Guru のモデルとされるディルバイ・アンバニが、 1 代で築き上げた新興財閥。豊臣秀吉、松下幸之助、本田宗一郎などに匹敵する立志伝だ。日本の財閥でいえば、戦前に三井物産と渡り合った鈴木商店が思い浮かぶ。リライアンス財閥は、アンバニ亡き後、2 人の息子が相続争いをした挙句、母親の仲介で財閥を 2 分した。ビルラ財閥と同様、「田分け」をやってしまったわけだ。一説によると、2 人の息子は腹違いとのこと。映画で言えば、Housefull2 (ハウスフル2)のタブーとチントゥーのような関係か。兄弟仲がずいぶん悪いらしい。

ディルバイ・アンバニにも興味あるが、それ以上に興味をそそられるのは、タタ財閥である。
「社会が貧しいのは大企業の責任である」
「企業の利益は社会に還元すべきである」
といった同財閥の経営理念は、世界中で勢いを増している強欲資本主義に対抗する経営理念として大いに注目される。

今後もう少し、タタ財閥のことを調べてみたい。
何か新しい価値観を見つけられそうな気がする。

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