しかし、インド国民が全員ヒンズー教で、パキスタン国民が全員イスラム教かというと、決してそんなことはない。インド国民の約 13%がイスラム教で、少数派ではあっても日本の人口よりも多い 1 億何千万人かのイスラム教徒がインドで暮らしている。
そうなると、ヒンズー教徒とイスラム教徒の間に愛が生まれることもあり、ヒンズー教徒とイスラム教徒が結婚するということもあるわけだ。
映画では、2008 年に公開された「Jodhaa Akbar」(ジョーダ・アクバル)が、まさにヒンズーとイスラムの問題を正面から取り上げている。
ムガール皇帝でイスラム教徒のジャラールディン・アクバルと、アメールの王女でヒンズー教徒のジョーダ姫が政略結婚する映画だ。政略結婚といえば、日本人なら浅井長政とお市の方を思い浮かべるかもしれないが、互いの宗教まで異なるとなると、ただ事ではない。映画でも描かれていたが、周囲の反発も尋常ではない。
そして、「マイ・ネーム・イズ・ハーン」が、ヒンズーとイスラムの問題を正面から取り上げている。インドでは(おそらく世界中で)ハーン(カーン)という名前だけでイスラム教徒だというレッテルを貼られるらしい。
「マイ・ネーム・イズ・ハーン」の主人公、リズワン・ハーン(シャールク・カーン)はイスラム教。リズワンと結婚するマンディラ(カージョル)はヒンズー教。マンディラの名字は、リズワンと結婚することによって "ハーン" に変わる。マンディラは、愛さえあれば、名字が変わることなど大した問題じゃないと思って結婚する。
しかし、米国で発生した 9.11 同時多発テロでイスラムに対する偏見、差別、迫害が一気に噴出する。「ハーン」という名字のために、イスラム教徒だと思われてしまう。そして、イスラム教徒は全員テロリストだと思われてしまう。
2 人を襲う悲劇。偏見が生み出す暴力。
それが原因でマンディラの子供が殺害される。
マンディラはリズワンと結婚したことを後悔してリズワンを罵る。
皆が私たちをテロリストだと思っている。私たちがテロリストじゃないって皆を説得できるの?
大統領にそう言ってよ!
My name is Khan. But I'm not a terrorist.
大統領に、この一言を伝えたくて、、、
インド映画には違いないが、伝統的なインド映画のジャンルには入らない。
しかし、いい映画だ。見て損はない。評価は A。
で、シャールク・カーン。
彼は、私生活ではイスラム教徒。妻のガウリはヒンズー教徒。
私生活も、この映画そのままだ。
もちろん、彼はテロリストじゃない。
「マイ・ネーム・イズ・ハーン」の迫真の演技ができるわけだ。
今、イスラム国がどうしたとかで、再びイスラムに対する偏見が膨らもうとしている。
イスラム国を非難しつつ、彼らの残虐性を誇張して、これとばかりに宣伝する。
まるで、イスラムが世界の敵だと言わんばかりに。
そして偏見が生まれ、差別が生まれ、暴力につながる。
日本で言えば、朝鮮人差別がこれに当たるのか。
My name is Khan. But I'm not a terrorist.
今こそ、この言葉をかみしめたい。
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